浄土(じょうど)とは
大乗仏教の用語。
仏や将来仏となる菩薩(ぼさつ)の住む清浄な国土をいう。煩悩(ぼんのう)で穢(けが)れている衆生(しゅじょう)の住む現実の世界を穢土(えど)というのに対する。
浄土という漢語は中国において成語化されたが、しかしこの漢語によって表される観念はすでにインドにおいて成立していた。
大乗仏教では、仏の悟りを求める修行者(菩薩)たちは、生きとし生ける者(衆生)を救済しようという誓願をたてて修行し、ついにそれを完成して仏となることを説くが、こうして出現する仏の世界が浄土にほかならない。
諸仏の出現すべき国土は、一世界に二仏の並存する道理がないため、われわれのこの世界以外のところにそれぞれ現に存在するという。阿弥陀仏(あみだぶつ)の西方極楽(さいほうごくらく)世界、阿 仏(あしゅくぶつ)の東方妙喜(みょうき)世界、薬師仏の東方浄瑠璃(じょうるり)世界などがそれであり、これら諸仏の浄土はこの世界から四方、四維、上下の他の方角に存在するから、他方浄土あるいは十方(じっぽう)浄土という。
中国・日本の仏教では、このうち阿弥陀仏の極楽世界が他の仏の浄土に比べてもっとも多く信仰の対象とされてきたので、今日一般に浄土といえば西方の極楽浄土をさし、極楽浄土への往生(おうじょう)を説く教えを浄土教と称し、浄土宗、浄土真宗が成立した。
[ 日本大百科全書(小学館) ]